山に登る理由を考える
「趣味は登山です」と言うとよく聞かれるのが「なんで登るの?大変じゃないの?」といった質問。「そこに山があるから」で済まないのが現実世界なので、まとめてみることにしました。
※今回は趣味で山に登ることを対象として、仕事などで山に登るのは対象外としています。
目次
そもそもなぜ聞かれるのか
例えば、趣味は読書です、映画鑑賞です、野球です、アニメ・ゲームです、車です、料理です、旅行です、なんでもいいのですが、その後に「なぜ?」という質問が来ることは少ないと思います。
普通の(?)趣味であれば、自分が楽しく気持ちよくなれるものであり、要するに「登山」という行為に、「疲れる」、「きつい」、「大変」というイメージが前提にあるというのがポイントかと思います。
そういう意味だとランニングや筋トレなど、基本的に自分に負荷をかける趣味については同様な質問が発生しそうです。最近は趣味も多様化していて、十分に市民権を得ているようにも思いますが。
登山で得られることを考える
最終的な結論は色々な要素が複合機的に絡み合って、「楽しいから」とまとめられてしまうのですが、細かい点を具体的に考えてみたいと思います。
登ること自体が目的の場合
健康のため
登山するうえで健康が目的というのは多いと思います。自分も登山以外に体を動かすことが少ないので、健康維持に大いに役立っていると思います。また低山から高山まで、山は自分でレベルを選べますので、どんな方でも挑戦できるが登山の良いところであります。ランニングや水泳に比べると景色など変化に富んでいて楽しいですし、ストイックさも少ないのではないかと思います。
ピークハント、百名山など
登山を始めて間もないころは少ないと思いますが、登山を続けているとスタンプラリー的にあちこと登りたくなることがあります。この場合は登山が趣味の人以外からの理解を得るのは難しいと思いますが、登山を続けていると目指したくなってしまいます。
山小屋でピンバッジやペナントを揃えるのも似たようなところかと思います。どうも人間には収集癖があるようですが、興味のない人には理解を得られない可能性もあり。
達成感
山に登るのはつらいです。ですが、そのつらさが大きければ大いほど、登り切った際の達成感は格別なものになります。日常的に山に行ける人は少ないと思いますので、数ヶ月から、長ければ数年単位で目標にすることもあるかと思いますが、自分の決めた目標に対し、それを達成した際の感動は言葉にできないものであります。また自らの立てた計画を達成するという自己実現にもなると思います。こういった「目標を与えてくれる」、というのは登山の良いところだと思います。
ただし、登ったことのない人には感覚的に理解されない可能性が高いですし、こういうところが認識のギャップになっているものと思われます。なかなか登山の良さを伝えるのは難しいです。
縦走などチャレンジ精神
北アルプス全山縦走や富士山を0合目(駿河湾)から歩くなど、登山や山の中を歩くことそのものが目的になることがあります。これも一般的には理解されがたい面がありますが、登山をしている人からすると憧れるところもあります。ただ、これくらいになると、登山が趣味の人の中でもできる人とできない人の差が出てくるため、登山者によっても評価が分かれてくれるかもしれません。徒歩や自転車で日本縦断のような、チャレンジ精神によるものと思われますが、達成感のさらに上の概念になると考えられます。
スリル
一部の高校の登山部では剱岳など北アルプスの登山を禁止するなど、登山において危険があることは確かです。事故のニュースも絶えません。ですが、日常の生活では味わえないスリルを求め、自分の技術や経験を頼りに挑戦するということはあるかと思います。
自分も黒部の水平歩道の写真を見た時は、まず日本にこんなところがあるのかと目を疑いましたし、実際行ってみたいと思いました。普段の生活では味わえない感覚を得られるのは確かです。
ただし、スリル面を強調すると周りの人から心配されるので、スリルを求めて山に登るというのは公言するのは控えたほうがよいかと思います。
またスリルだけが目的ではないかと思いますが、鎖場や難所をいくつも越えた先にはクライマーへの道があります。こうなると登山とはまた別のジャンルになりそうです。
登ること以外が目的の場合
登ること自体が目的ではないものの、登らないと得られないことがあります。
景色(風景・星空・雪景色など)を見たい
もちろん山に登らなくても見れるものもありますが、山の中で見る景色は格別です。普通に下界で生活していると見られない景色がたくさんあるため、この点を訴求すると理解を得られやすいと思います。ただしこれも実際に経験のある人でないと実感が沸かないかもしれません。
風景や星空は一般的にどの登山者も楽しんでいるところかと思いますが、雪景色となると危険性が増すのと雪山の技術が必要になるので、周囲からは心配の声が強くなります。また特に雪景色を含めた風景の撮影や、星空の撮影を専門とする方は、撮影の難易度などもあり少し特殊な専門家の世界になりそうです。
動物・植物・昆虫を見るため
言うまでもなく、高山植物など他では見れない動植物たちがいます。高山では見たことはないですが、低山では昆虫採集をされている方もいました。何せ山の中が下界と異なる特殊な空間であり、目指すべき対象であることが分かるかと思います。山にしかいない、というところをアピールすれば理解が得られやすいと思います。
魚釣り
単純に探しに行くというよりも釣ることが目的であり、 動植物とは別にしてみました。個人的に驚いたのは、高天原温泉に行った際に山奥のさらに奥で渓流釣りをされている方がいて、その辺の登山者より登山者なのではないかと思った次第でした。こういう方々は趣味が登山とは言わないとは思いますが。
山菜・キノコ採取など
個人的に山の中で山菜などを採取している方を見たことはないのですが、 登山をしていても一見して山菜取りが目的は分からないため、もしかしたらたくさんの山菜・キノコファンとすれ違っているのかもしれません。本人は趣味が登山とは思ってはいないかとは思いますが。
スキー
下るために登るという一見矛盾した行為ですが、一部の山ではスキー板を担いで登っている人もいます。滑るときは気持ちいいだろうなぁと思いつつ、スキー板を担いで登るのは通常の登山では考えられないほどの苦労がありそうです。通常のスキーでは物足りない方々だと思うので、これもかなり通な趣味かと思われます。
食事、お酒
山の中で食べる食事はなぜかうまい。真理だと思います。同じコンビニのおにぎりでも会社の昼休みに食べるのと山の中で食べるのでは全然おいしさが違います。
もう一歩深堀りすると、食べる環境だとか、状況によるのだと思いますが、基本的に登山中はストレスはあまりないでしょうし、リラックスした状態で食事を取れるというのがあるかと思います。
また決まった休憩ポイントなどで食事を取ることになるので、空腹を感じたらすぐ食事という流れにならず、我慢してから食べる⇒とってもおいしい、という状況になるのかと思います。そういう状況を作り出してくれる登山というものの魅力だと思います。
あと、登山は基本的に汗をかくので、塩分が不足する状況になると思います。そういった状況で食べるラーメン(個人の趣味によりますので、塩分の濃い食事を想像してください)は、体が欲した成分を補給できるという意味で、本能的にもおいしい食事になるかと思われます。
ただし、この辺は経験したことがないとなかなか想像できない部分もあるため、心の底から納得してもらえなさそうな気がしています。
三俣山荘夕食メニュー ジビエシチュー については公式HPをご参照ください。
温泉
自分も温泉が目的で登山を始めたような感じですが、山の中を歩いてしか入れない温泉があります。温泉がそこまでのモチベーションになるのかというのも不思議なところですが、歩いてしか行けない⇒希少価値が高い、ということで、登山をする理由の1つになるかと思います。ただし、周りからの理解はなかなか得られないかもしれません。
テント泊のため
なぜだかわかりませんが、テントで寝るというのは非日常感があり、大変楽しいものです。そのためには多少荷物が増えてもなんのその。個人的に難易度の高いルートをテント泊の装備を担いで歩いている人を見ると心配になりますが、小屋泊の金銭的負担を考えるとテント泊装備を担いで縦走する気持ちもわかります。昔からかと思いますが、オートキャンプ場なども整備されていはいるので、あえて山の中でテント泊というのは、景色などを熟知した通な趣味になるかと思います。
野宿の好きな自分としては、たぶん近所の公園で寝たとしてもこの非日常感は味わえると思うのですが、いかんせんすぐに家に帰れる状況や、近場に宿泊施設のある状況では面白みが激減します。そういった意味でやはり登山というのは非日常感を演出してくれる重要なスパイスであると思われます。
まとめ
登山と一言で言ってもその魅力は様々であり、山に登るのは疲れる行為である、という先入観も相まって、なかなか説明の難しいものかと思います。自分の経験などを踏まえ、誰かに聞かれた際には、今回まとめた情報が参考になればと思います。